青森の空から、旨さが飛び出した
筆者の世代でいうと、青森と言えば東北本線の終点、そこから青函連絡船で函館へ渡る場所として憧れを持った場所である。列車を丸ごと船体に飲みこむ青函連絡船にかっこよさを憶え、いつかは乗ってみたいと考えているうちに青函トンネルが開通し連絡船は廃止になってしまった。そんな思いを馳せた青森であるが、お米の世界では長年評価の低い産地で、雪が多く冬は寒さが厳しい、夏から秋にかけても年によっては気温が上がらない土地柄から、耐冷性に特化したものが多く味はイマイチというイメージがあった。
青森県はその味がイマイチと言う評価を覆そうと、平成9年に「つがるロマン」と言う品種をデビューさせる。「つがるロマン」はコシヒカリの孫に当たる品種で、耐冷性と食味・品質を向上させ県産米のグレードアップを担う銘柄となった。しかしながら東北は米の一大産地であり、秋田の「あきたこまち」、宮城・岩手の「ひとめぼれ」、福島の「コシヒカリ」、山形の「はえぬき」など言わばオールスター選抜のような銘柄がひしめき、美味しいながらも相対的に評価が上がらず、青森は業務用米の産地としての地位から抜け出せない環境にあったのだった。
そこで青森県は品種改良に約10年の歳月をかけ秘蔵っ子を投入した。
青森の特産品と言えば、りんご、まぐろ、にんにくが有名だが、それだけではない。三方を海に囲まれ背後には雄大な八甲田山を有した自然豊かな環境から魚介類にのみならず、味が濃くおいしい野菜や果物が育ち、また大自然の力を借りて行う畜産も盛んである。このような多様な食材のどれとも相性が良く、更なる魅力を引き出すポテンシャルを秘めたお米として投入されたのが「青天の霹靂」なのだ。
さっそく取り寄せてみると、いままでの米のイメージと違うエメラルドグリーンを基調としたパッケージが目を引く。シンプルでありながらインパクトのある米袋デザインには「今までにない青を、青森の青としました。海の色でも、森の色でもあるような、やさしい青。そんな色の空がパカンと割れて、青天の霹靂が飛び出してきた。米の旨さが天の四隅にのびやかに広がっています。ロゴの文字は、尖った稲妻、稲穂の穂先をイメージして、はらいに特徴がある書体にしています。」と言う意味が込められたと聞く。
袋を開けると、乳白色の半透明が多くこの段階から粒ぞろいが良くおいしいのではとの期待が膨らんだ。炊き上がりは白く、つやがありごはんの甘みを表現するような香りが漂う。青森の米と言うと、どちらかと言えば硬くあっさりとした食味を想像してしまうが、この青天の霹靂は「コシヒカリか?」と思うほどの粘りと甘みをがあり一粒一粒に弾力を感じた。
「青森から、驚きの旨さ」納得である。